SAPHIR対談

Marc Moura氏
Avel社 CEO

革靴好き御用達シューケア・レザーケアブランド<SAPHIR(サフィール)>を傘下に置くフランスのAVEL(アベル)社。そのアベル社の社長を務める。 

沖本 浩一郎氏
株式会社ルボウ 代表取締役社長

約40年間、株式会社名古屋ジュエルとしてジュエル靴クリームを中心に国内外のシューケア・フットケア用品の卸売から、自社ブランド製品の企画販売。 2008年1月より、AVEL社製品の正式な日本総販売元になる。




<SAPHIR(サフィール)>を傘下に置くフランスのAVEL(アベル社)の社長を務めるMarc MOURA(マーク・ムーラ)氏が6月上旬に来日し、 サフィール日本代理店の株式会社ルボウの沖本氏、 フィットハウスの吉田氏、鈴木氏が対談を行いました。サフィールのコト、靴磨きのコト、 日本のコトなど色々な話を伺うことが出来ました。

Q. 今回の来日の目的は?

A.フランスを出発して3週間経ちました。ドバイ、シンガポール、メルボルン、シドニー、東京、名古屋を回っています。
 日本にはマーケット視察の為に来ました。  日本のマーケティングは進んでいるので、その方法などを他の国にシェアしたいのが一番の目的です。  国によって価値感が異なるので、自らカスタマーなどの意見を聞き、ディスプレーなどを見て、持ち帰って参考にしたいと思っています。  それから、アジア(韓国、台湾、中国、タイ)のディストリビューターチームの合同ミーティングを行い、意見交換も行いました。

Q. 日本の印象は?

A.日本の人は良い人ですね。富士山も綺麗だし、しゃぶしゃぶも美味しい。(笑)
 日本では雑誌などのメディアでシューケアの特集をよく見かけます。 選別するのが大変なくらい…。
色々なものにこだわりを持っている日本人の気質が靴磨きに向いているんでしょうね。
鈴木さんのようにね。(笑)  だから日本の靴磨き職人のレベルは世界トップクラスなんでしょうね。

Q. サフィール誕生について教えてください。

A.会社の創立した1920年に、フランスの南アルプスの山岳地域で作られました。
 雪山で使うブーツなどはレザーで出来ていて、水や氷からレザーを守るためにケアすることが重要だった為、そのケアをするものを求められたことが始まりとなっています。
 またフランスには、エルメスやルイ・ヴィトンといった高級・高品質なブランド・メーカーが数多く存在し、レザーケアに特別なこだわりをもっています、我々はその要望に応えてまいりました。 例えば「パラブーツ」はクオリティーを大切にする伝統的なシューメーカーですが、そういった優れたブランドからの要望に応えていくことで商品力を向上させていったことがいい結果につながったと思います。


 OEMを繰り返す中で初めて作られたのが「レノベーターサフィール」。
 レノベーターサフィールがマーケットでビッグヒットし、今は「レノベータークリーム」として販売しています。
 シューケアのメインアイテムは瓶入りのクリームでサフィールノワールの「油性クリーム・ワックス」。他に我々はイギリスの「ダスコ」、スペインの「タラゴ」というシューケアブランドを展開しており、 それぞれ全世界、約84ヶ国で販売している。
 それら多くの国々の中でも、「ロシア」での需要が大きいですね。気候が厳しく、寒いし沢山の雪が降る。それに、ロシアはアメリカやカナダと比べてファッション好きで、ブーツはかっこ悪いと思っていて、雪の中でも普通の靴を使っている人が多いです。
 そのケアのためにロシアではよく売れている。ロシアの外は寒いけれど屋内はとても暑い。だからブーツなどハイカットは蒸れて暑くなるから‥。

Q. ブランドへのこだわりは?

A.当ブランドのこだわりはお客様第一。

 材料費が高くても、いい物を使ってお客様に提供したい。  シアバターやホホバオイルなど化粧品などで使う材料を、量を惜しまずに使用しています。

特にサフィールノワールは、天然成分を使った伝統的なレシピでつくられているハイグレードラインです。 1925年のパリ万博で金賞を獲得した。その当時とほぼ同じ製法でつくられています。
最高品質のテレピン油やビーズワックス、カルナバワックスなどの天然原料を厳選し、極限までその配合比率を高めて調合した製品は、ハイエンドの皮革製品のケアにふさわしい品質と性能を兼ね備えているのが特徴です。その技術力が認められ世界的なトップブランドとの密接な協力関係を築けています。

 また、フランス政府から Entreprise du Patrimoine Vivant(Living Heritage Company―「生きた遺産」)として認証されました。この賞は優れた技術力と伝統な製法、職人精神を根底にもつ企業が認証・授与 される賞です。 認証されているのはエルメスやルイ・ヴィトンなどフランスを代表する世界的な企業ばかりなんですよ。

Q. 現在のAVEL社は?

A.ファミリービジネスで祖父から始まり私が3代目になります。
現在、22歳の娘(カティア)が働き始め、SNSの担当を任していますよ。 カスタマーとのコミュニケーションが重要だからビジネススクールでも勉強しているんです。

4月からは靴磨きに力を入れていて、各店舗に指導する予定です。

Q. 日本のマーケティングはどう思われますか?

A.日本のマーケティングは世界の中でも進んでいるよ。

 日本の方は審美眼に優れていて、何がよくて悪いのか敏感だから、ハイレベルなサービスを求める消費者が多い。企業はそれに答えるためにとても努力をしていると思う。
ただ、日本のメーカーは国内での商品の発売に関してパッケージで損をしている。 日本のメーカーならもっと日本らしさを押し出すべきだ。
海外での販売ではないのに、なぜ英語で書いてあるのかわからない。

Q. 100周年の記念には何かするのでしょうか?

A.タイでディストリビューターを集めて大きな集まりを考えています。

 それから、レザーバームローションの商品パッケージに、ノートルダム寺院のイラストを入れて販売する予定です。購入すると1ユーロがノートルダム寺院に寄付されると言う企画を考えていますよ。

 会社としてもノートルダム寺院には1万ユーロを寄付しました。

今、フィットハウスでは靴磨きに力を入れています。クロケット&ジョーンズなどの良い靴を展開したいので…

クロケット&ジョーンズは良いですね。  イギリスで最も優れた靴メーカーとしての地位を誇るクロケット&ジョーンズのその仕上げには実はSAPHIRの ノワールシリーズを使用しているんです。まだまだ彼らの要望に応えるためには引き続き準備や研究が必要ですが。 今度、クロケット&ジョーンズの方を紹介しますよ。(笑)



プロのホテルマンは、靴をみてその人のことを判断するという話を聞いたことがある。 それだけ、靴がキレイかどうかは、信頼に値する指標になるのだろう。人に良いイメージを持ってもらおうと思えば、靴をキレイにすることは、もはや常識なのかもしれないがそれだけではない。 今回の対談を聞いて、シューケアはアナログレコードを聴くような感覚かもしれない。手入れの方法さえ間違えなければ、趣味の一環として楽しめる。 仕事を楽しみ、生きることを楽しんでいる大人の人生哲学が詰まっているような気がした。